相続で契約者変更をした保険の税金について
 

こんにちは、今回は「相続で契約者変更をした保険の税金」についての相談事例をご紹介します。

◆ご相談内容◆

・父が亡くなり書類整理したところ、契約者が父、被保険者が私(A)になっている生命保険を見つけた
・2年後満期になったときに満期保険金がおりる契約
・保険会社に確認したところ、契約者を父から私(A)に変更して引き継ぐよう案内された
・引き継いだ生命保険は、父の相続に係る相続税においてどのような扱いになるのか。
 また、引き継いだ後の満期保険金の税金についても教えて欲しい。

【契約内容】
◆ 保険種類:養老保険
◆ 保険金額(死亡・満期):500万円
◆ 保険料払込方法:全期前納払い(全額父負担)
◆ 契約者:父(契約引継ぎ後:A)
◆ 被保険者:A
◆ 死亡保険金受取人:父(契約引継ぎ後:Aの配偶者)
◆ 満期保険金受取人:父(契約引継ぎ後:A)

◆詳細解説◆

相続により引き継いだ生命保険は「生命保険に関する権利」として、お父様がお亡くなりになった時点の解約返戻金相当額に経過保険料等を加算した額が相続税の課税対象となります。
また、Aさんが受け取ることとなる満期保険金は、所得税(一時所得)の対象となります。

1.被保険者とは異なる契約者が保険契約期間中に死亡した場合
被保険者とは異なる契約者が保険契約期間中に死亡した場合は、契約者の変更を行います。変更後の新しい契約者は、その契約の権利を引き継ぐことになります。

2.相続時の税務上の取扱い
引き継いだ生命保険は、「生命保険に関する権利」として相続税の課税対象となります。

(1)評価額
評価額は、原則、契約者が死亡した時点の解約返戻金の額となります。
ただし、ご相談のケースのように、保険料が前納されており解約返戻金とは別に受け取ることができる未経過保険料がある場合や、配当金等がある場合は、解約返戻金に未経過保険料や配当金の額を加えた額が評価額になります。

(2)相続財産の評価
“生命保険”となると、死亡保険金の非課税枠を思い浮かべるかと思います。
しかし、ご相談のケースは保険事故が発生していない生命保険であり、本来の財産として取扱われます。
死亡保険金の非課税枠(※)の適用ができる被相続人の死亡を保険事故として受け取る生命保険とは異なるため、死亡保険金の非課税枠を適用することはできません。
※(500万円×法定相続人の数)を限度として、相続税の計算上非課税とすることができる制度です。

3.満期保険金に係る税務上の取扱い
将来Aさんが受け取る満期保険金は、契約者と満期保険金受取人が同一であるため、所得税(一時所得)の対象となります。
一時所得の計算においては、相続により権利を引き継いだ生命保険は、引き継いだ契約者自らが当初から保険料を負担したものとして取扱います。

なお、契約者が被保険者より先に亡くなって引き継がれる生命保険は、相続財産の確認において漏れやすいため、税制改正により保険会社から税務署へ発行される調書の見直しがされており、現状では死亡により契約者が変更された一定の契約については、一定事項を記載した支払調書が所轄税務署長へ提出されることとなっています。
税務署にとっては死亡による契約者変更の事実を把握しやすくなりましたが、ご遺族としてはどのように扱えばよいか分かりづらい契約形態であることに変わりありません。

ご不明点等お気軽にご相談ください。