遺産分割に関する民法改正と相続税の申告期限
 

こんにちは、今回は「遺産分割に関する民法改正と相続税の申告期限」についての相談事例をご紹介します。

◆ご相談内容◆

・遺産分割について「10年」を経過すると、基本的には法定相続分とする民法改正がありましたが、これに伴い相続税の申告期限が改正されましたか?

◆詳細解説◆

ご相談の民法改正に伴う相続税の申告期限の改正は、行われていません。

1.遺産分割に関する民法改正

これまで、遺産分割については、相続開始(被相続人の死亡)時から何年経過した後に行っても、分割方法に違いが生じなかったことから、早期に遺産分割の協議または請求をすることにつき、インセンティブが働きにくい状態でした。
しかし、遺産分割がされないまま相続が繰り返され、多数の相続人により遺産が共有されると、遺産の管理や処分が困難となり、そのような状態下で相続人の一部が所在不明となることが、所有者不明土地が生じる原因の一つとなっていました。
そこで、所有者不明土地の解消に向けた民事基本法制の見直しとして、遺産分割に関する民法の規定が改正されることになりました。

たとえば、具体的相続分(※)による遺産分割に時的限界が設けられ、相続開始時から10年を経過した後にする遺産分割は、原則として具体的相続分ではなく、法定相続分によることになりました(合意があれば、10年経過後でも具体的相続分による遺産分割は可能です)。
この改正は、経過措置を除き、令和5年(2023年)4月1日に施行されます。

(※)具体的相続分とは、民法であらかじめ定められている画一的な割合である法定相続分を、事案ごとに修正して算出する割合であり、特別受益や寄与分などを踏まえて算定されるものをいいます。


2.相続税の申告納税期限

相続税の申告は、被相続人が死亡したことを知った日(通常の場合は、被相続人の死亡の日)の翌日から10ヶ月以内に行うこととされています。たとえば、10月10日に死亡した場合には、翌年8月10日が申告期限となります(この期限が土曜日・日曜日・祝日の場合には、これらの日の翌日が申告期限です)。
この「10ヶ月」という期限は、上記1.の民法改正が行われても変わりません。なお、相続税の納税期限は、上記申告期限と同一です。

3.未分割の場合の相続税の申告納税期限

相続税の申告に際して、遺産分割協議が調わない場合(いわゆる「未分割の場合」)であっても、申告納税期限に変更はありません。未分割のまま申告納税を行います。
未分割での申告納税とは、相続財産を法定相続分で相続したものとみなして申告納税を行うことを指します。
その際には、相続税が減額できる「小規模宅地等の特例」や「配偶者の税額の軽減」を適用することができません。
その後に分割が行われた場合は、実際に相続した財産、かつ、これらの減額を適用した後で相続税を計算し直すため、結果的には相続税を減額することはできますが、一時的にしろ未分割の状態での納税は、かなりの納税資金が必要となる場合があります。

ご不明点等お気軽にご相談ください。